時代々々の著名人に愛されて
初代 中村鴈治郎のご息女が、ちもと10代目当主松井新七の元に嫁がれたご縁もあり
五代目菊五郎、初代中村吉右衛門、市川羽左衛門をはじめとする東西の役者さんと
大正の頃より親交がございました。
南座公演の度に宴を開いて頂いておりました。
舞台終演の花道での台詞に
「うぅ(寒さに身震い)、今宵はやけに冷えるなあー、
四条大橋向こうのちもとで一献、ぬくもるとするか…」
なんていう洒落たアドリブもあったと、先代が嬉しそうに話していたことを思い出します。
そんな粋な時代に役者衆が描かれた寄せ書きは
今では屏風に姿を変え大切な家宝となっております。
日本画家の堂本印象先生、竹内栖鳳先生、富岡鉄斎先生、三輪晁勢先生など
日本画家の巨匠にも親しんでいただき、
数多くの作品が今も尚受け継がれております。
近年では春夏秋冬をテーマにされた絵画を北野武氏に寄贈いただいております。
また文学の方面でも、泉鏡花先生、谷崎潤一郎先生、吉井勇先生方にもご贔屓賜り、
なかでも泉鏡花先生に於いては、
ちもとを小説「祇園物語」の舞台に取り上げていただくなど、
ひときわ御愛着を寄せていただきました。